投資分析: 大末建設 – 資本効率の是正を促す触媒(カタリスト)



1. Executive Summary


この投資の核心は、「慢性的に過剰資本状態にあるバランスシートと、深く根付いたリスク回避的な経営文化」という構造的な歪みを利用し、「fundnoteの登場」というカタリストによって抜本的な資本の再配分を強いることで、株価の再評価(リ・レーティング)を促すことにある。


2. 物言う株主の登場:fundnote/Kaihouの投資仮説を読み解く


大末建設(以下、大末建設)への投資機会が今、現実的かつ実行可能となった最大の理由は、著名投資家である井村俊哉氏が率いる株式会社Kaihouが投資助言を行う「fundnote日本株Kaihouファンド」が主要株主として登場したことである 1。これは単なる大株主の出現ではない。長年にわたり市場から見過ごされてきた同社の構造的な問題を解決に導く、強力な「触媒(カタリスト)」の出現を意味する。


井村俊哉氏の投資哲学と大末建設


井村氏の投資スタイルは、徹底的なファンダメンタルズ分析に基づき、企業の本源的価値に対して株価が著しく割安(例えば半値)な状態にある銘柄を発掘し、そこに資本を集中投下するというものである 3。同氏が追求するのは、市場がまだ気づいていない価値、すなわち「アルファ(超過収益)」であり、そのアルファを最大化するために、極めて厳選した少数の銘柄に大きなポジションを構築する 6

大末建設は、この投資哲学に完全に合致する。後述の通り、同社は著しいネットキャッシュを保有しながらも株価純資産倍率(PBR)は長らく1倍を割り込み 8、自己資本利益率(ROE)は低迷を続けている。これはまさに、井村氏が言うところの「本源的価値から半値で売られている財布」であり、市場による明らかなミスプライシング(価格の歪み)が存在することを示唆している。


fundnoteの登場が意味するもの:静的な価値から動的な機会へ


重要なのは、大末建設の割安さや資本の非効率性は、昨日今日に始まった問題ではないという点だ。これらは慢性的な「構造的欠陥」であり、それゆえに同社は長年「バリュー・トラップ(万年割安株)」として放置されてきた。しかし、fundnoteの登場がこの状況を一変させた。

2025年3月19日に提出された大量保有報告書で6.21%の保有が明らかになって以降 9、fundnoteは積極的に買い増しを進め、同年10月には保有比率を13.86%まで高めている 11。これは、単なるパッシブな純投資とは考えられない。井村氏の投資スタイルとKaihouの「エンゲージメントによるアルファ創出」という方針 2 を踏まえれば、これは経営陣に対して抜本的な改革を迫る明確な意思表示である。

fundnoteの存在は、大末建設を単なる「割安株」から、「価値顕在化への明確な道筋を持つ投資案件」へと変貌させた。我々の投資は、この強力な触媒が経営陣の慣性を打ち破り、株主価値の最大化に向けた行動を強制するという仮説に基づいている。


3. 構造的歪みの分析:非対称なリターンの源泉


大末建設が抱える構造的な歪みは、財務、ガバナンス、そして事業モデルの三つの側面に深く根ざしている。これらこそが、我々が追求する非対称なリターンの源泉である。


3.1. 財務の非効率性:活用されない資本の要塞


「割安」の再定義:低PBRの裏にある低ROEという本質


大末建設のPBRは、直近でこそ1倍を回復する場面も見られるが 13、歴史的には極めて低い水準で推移してきた。しかし、この「割安さ」は単なる市場の評価ミスではなく、同社の根本的な「資本効率の低さ」を正しく反映した結果である。問題の本質は、株主から預かった資本を効率的に利益に転換できていない点にある。

同社のROEは、2022年3月期の9.1%から悪化の一途をたどり、2024年3月期には僅か5.6%にまで低下している 14。これは、多くの機関投資家が求める最低水準である8%を大きく下回っており、資本コストを考慮すれば、実質的に株主価値を毀損している状態にあると言っても過言ではない。

この低収益性は、同業他社との比較でより鮮明になる。

表1:中堅ゼネコン財務指標比較